写真を始めた最初の頃は「風景」や「スポーツ」等のシーンモードから撮りはじめ、慣れていくうちに横の「P」とか「A」とか「T」や「M」のダイヤルが気になってくるというのが大体の流れだと思います。

Pはフルオートなのでともかくとして、それ以外はカメラの知識が必要で、そこで初めて「露出」というものを意識するようになります。

この露出というのは理屈自体はそれほど難しくはないのですが、初めて聞く言葉のオンパレードなのでちょっととっつきにくい感があります。

そこで今回はマニュアルで撮れるようになるには避けて通れない「露出」について、できるだけ難しい言葉は避けて色んな例えを用いながら話を進めていきたいと思います。

1回読んで理解するものではないので、少しづつ読んでいって1つ1つ理解していく事をオススメします。


まずは簡単に説明します

いきなり難しい話を始めても頭に入りにくいので、まずは前段階としてイメージで掴んでいきましょう。
イメージで掴んだ方が後々の話も理解が早いと思います。

むしろ今日はこの部分だけを覚えてくれればOKで、残りは後日でも構いません。


イメージで言うと、露出とは

露出とは真っ暗な部屋で「カーテン」を「何秒間」開けていられるか?というイメージです。

写真とはカメラという真っ暗な部屋に光を入れて描くもので、この構造は大昔のカメラから最新のデジカメまで変わりはありません。

では、カーテンを1秒間全開にした状態が「ちょうど良い感じ」だとしましょう。(何を持って「ちょうど良い感じ」なのかは、後ほど別記事のリンクをご案内します)

カーテンを1秒間全開


次に、カーテンを半分しか開けていないとすれば、ちょうど良い感じにするには何秒間開けておく必要があるでしょう。

答えは2秒間です。
カーテンが半分しか空いていないと言う事は、光の入って来る量が半分になるので、倍の2秒間開けて初めてちょうど良い感じになります。


カーテンが半分だと光が入ってくる量も半分になるので、


倍の2秒間開けておく必要があります。


同じ理屈でカーテンが5分の1しか開いていないとすれば、ちょうど良い感じにするには5秒間カーテンを開けておく必要があるという具合です。






カーテンの開け具合によって秒数を調整し、また逆に秒数によって開け具合を調整する事も出来ます。

そして文中に出てきた「ちょうど良い感じ」というのは「適正露出」と言い、これで撮るとちょうど良い感じの写りになります。
そしてそれを基準に「ちょっと暗めにしたい」とか「ちょっと明るめにしたい」時はカーテンの開け具合や秒数で調整するという感じです。


以降、ちょっとずつ新しい言葉を足していきます。

今日はこのイメージだけを覚えてくれればOKで、以降は新しい言葉をちょっとずつ足していきながら話を進めていきます。




125sec/F2.8/ISO400



例えで用いた「カーテン」と「何秒間」を具体的に説明していきます。

露出とは真っ暗な部屋で「カーテン」を「何秒間」開けていられるか?というイメージだという事を最初に話しました。

太字で描いた「カーテン」と「何秒間」というのがそれぞれの要素になり、例えで使った2つの言葉を具体的にお話していきましょう。


カーテンとはレンズの穴の事

カメラのレンズには穴が開いており、昔のいわゆるオールドレンズの場合はレンズにネジみたいなものが付いていて、それをクルクル回す事によって穴の大きさを調節する事ができ、そして最近のレンズはカメラの液晶画面で穴の大きさを調節出来るようになっています。

穴が



徐々に



大きくなってゆくのが



解ると思います。



そしてこれが全開の状態です。


カーテンと同じでこの穴が大きいと光が入る量も多くなり、小さいと光がちょっとしか入ってきません。

そしてこの穴の大きさですが、適当に開いている訳ではなく、全レンズに共通した規定があります。
それがいわゆる「F値」です。

F値とは「focal」の頭文字のFを取ったもので、「焦点の」という意味になります。
「F1.4」とか「F2」という具合に数字が付き、この数字によってカーテンの開け具合を表します。

この数字が小さいほどカーテン全開に近づき、大きいほど少ししかカーテンを開けていない状態になります。

F16



F8



F4



F2



全開(このレンズではF1.4)



数字の覚え方はいたって簡単


「F○○」の○○に入る数字ですが、F1からスタートして約1.4倍を掛け算した数字が次の数字になります。
↑の表ではF22までしか載せていませんが、理論上はどこまでも続いていく事が出来ます。

一般的に使う数字はせいぜいF1.4~F22くらいまでで、ずっとカメラをいじっていれば九九と同じように自然に覚えるものなので、特に暗記しようと構える必要はありませんが、一応簡単な覚え方というのが存在します。


数字は小数点も混じって一見複雑そうですが、実は1つ飛びで数字が倍になっているだけです。
ですので覚えるのは一番最初のF1とF1.4だけでOKです。

実際にはこれらの数字の間にも0.3(もしくは0.5)刻みで設定できるのでより細かく微調整する事もできます。


何秒間とはシャッタースピードの事


次に「何秒間」の部分ですが、これはシャッタースピードの事です。
最初の例えでは「カーテンを1秒間全開」という言い方をしましたが、カメラのシャッタースピードはかなり早く、1秒を何分割もするまばたきの世界です。


シャッタースピードも基本的には1秒を基準に数字を倍々に数えて行きます。
↑の表では8秒~1/8000秒までしか載せてませんが、8秒よりも更に遅くシャッターを切る事も出来ますし、1/8000秒よりももっと早くシャッターを切る事も理論上は可能です。

ですが、普通に写真を撮る場合は1/60秒~1/250秒くらいが一番使用頻度が多く、他はあまり使わないと思います。
シャッタースピードもこれらの数字の間に0.3(または0.5)刻みで設定できます。

マニュアルで撮影するというのは、冒頭のカーテンを何秒間と同じ要領でF値とシャッタースピードを自分で組み合わせて撮影をするという事になり、オートというのはカメラが自動でちょうど良い感じの所に合わせてくれるという事です。




500sec/F2/ISO200



3つ目の要素

これまでは「カーテン」を「何秒間」という2つの要素で話をしてきましたが、実は露出にはもう1要素組み合わせるものがあります。
また例によってイメージから入っていきましょう。

冒頭の1秒間カーテン全開でちょうど良い感じというのは実は黒いサングラスを掛けている場合の話だったのです。

もしこれが黒いサングラスではなくて、透明のメガネに変えると1秒間カーテン全開ではかなり眩しくなってしまいます。
ですのでカーテンを開ける時間を1秒→0.5秒とか、カーテンを全開から半分だけにするという具合に調整してあげる必要があります。
透明のメガネではなくグレーのサングラスの場合でも1秒→0.7秒とか、カーテン全開から4分の3くらいと言った所でしょうか。


時はさかのぼりフィルム時代の話


フィルムの箱には必ず大きな文字で数字が書かれています。
↑の写真でも100・200・400と書かれていますね。

これはそのフィルムがどれだけ(光に対して)敏感かを表した数字になり、専門用語で「ISO感度(いそかんど)」と言います。(端折って「ISO」とか「感度」と呼ぶ事もあります)

数字が大きくなればばるほど、どんどん敏感になっていき、ISO100が黒いサングラス、ISO200がグレーのサングラス、ISO400が透明のメガネというイメージです。

そして数字が大きくなればなるほど画質が悪くなるという性質があります。
逆に言うと数字が小さいほど画質は良いので、感度は高いに越した事は無いという事は一概に言えません。

デジカメもこれと全く同じで、デジカメの場合はこのISO感度をカメラ内で設定する事が出来ます。
このISO感度も例によって倍々で数えていき、間に0.3(または0.5)刻みで設定する事ができます。


一般的なデジカメでは100もしくは200が最低ラインで、大体12800とかカメラによってはその倍の25600や51200まで設定出来るものもあります。

でもそこまで数字を大きくしてしまうとかなり画質が悪くなるので、100~6400までがよく使われます。
性能の良いカメラだと数字の大きい感度でも綺麗に写ってくれ、全体的に見ても画質は向上してきています。

そして一部のカメラやフィルムには「感度50」や「感度25」といった感度100未満のものもあり、何と「感度1.6」というフィルムも存在します。


ちょっとおさらい

これでマニュアルで写真を撮る為に必要な「F値」「シャッタースピード」「ISO感度」の説明が終わりました。
1回読んだだけで理解するのは難しいので、今日はこの事だけを覚えてくれればOKです。

ポイント
・露出とは真っ暗な部屋でメガネを掛けて、カーテンを何秒間開けていられるか?というイメージである。
・「メガネ」「カーテン」「何秒間」の3つが要素で、それは「ISO感度」「F値」「シャッタースピード」の事である。
・マニュアルで撮るという事はこの「ISO感度」「F値」「シャッタースピード」を自分で組み合わせて写真を撮る事で、逆にオートはそれをカメラが自動的にやってくれるという機能である。


この3つを組み合わせて写真を撮る

マニュアル撮影では「F値」「シャッタースピード」「ISO感度」の3つを自分で組み合わせて写真を撮るのですが、そもそもどういう風に組み合わせれば良いのでしょう?

まずISO感度に関しては数字が低いに越した事は無いので、お持ちのカメラの一番小さな数字に合わせます。

その上で今までは露出という観点からF値とシャッタースピードについてお話してきましたが、この2つにはそれ以外にも役割があります。
ここではその事をお話していきましょう。


F値でピントの合う範囲を変えられる



「F値を小さくするとボケのある写真が撮れるよ」という話を聞いた事が無いでしょうか。
厳密にはそれだけでは不十分なのですが、一要素なのは間違いありません。

このF値によってピントが合う範囲をコントロールし、F値が大きいほどピントの合う範囲が広く、F値が小さいほどピントの合う範囲が狭くなります。
ピントとは写真がくっきり写る事で、ピントが合っていない所はボケた感じになるという訳です。


シャッタースピードで動きを出したりする


街の写真などで人や車が残像のように流れている写真を見た事は無いでしょうか。
あれこそがシャッタースピードの為せる技で、それによって写真に動きを出したりする事が出来ます。

逆に凄いスピードで走っている電車や飛行機を高速のシャッタースピードで撮って、止まっているかの様な写真を撮る事もできます。

そしてもう一つはシャッタースピードが遅いとブレが生じてしまうという問題があります。
シャッタースピードというのは1秒未満のまばたきの世界だと言いましたが、それでもブレてしまいます。

どれくらいのシャッタースピードでブレてしまうのかと言うと、お使いのレンズによって違って来るので一概には言えませんが、レンズが望遠になればなるほどブレやすくなります。


どのように撮りたいのか?による

F値にしろ、シャッタースピードにしろそういう事を加味して設定していきます。
これは表現の話にもなってくるのでハッキリとした事は言えませんが、もの凄くざっくりいうと

・背景をぼかしたい時はF値を小さく、逆に風景モードのように隅々までくっきりと撮りたい時はF値を大きく。
・誰かに呼びかけて声が聞こえる距離を撮る場合はシャッタースピードは125/1、それよりも遠い距離を撮る時は250/1、望遠鏡で覗いているくらいに遠い所を撮るには1/500。
という感じです。


実例

例えば背景をぼかしたいとしましょう。
その場合はF値を小さくする必要があるので、F値を一番小さい「F3.5」に設定しました。

ISO感度はカメラに最低の100としましょう。(カメラによっては200のものもある)


すると液晶画面の測光インジケーターのカーソルがパラパラと動きます。
このカーソルが真ん中に来るようにシャッタースピードを合わせてみましょう。

この日が晴れの屋外での撮影だとすると、おそらくシャッタースピードは1/250~1/500の間になると思います。

そして最近はミラーレスを使っている方も多いので、画面を覗きながらあなた好みのちょうどよい明るさになるようにシャッタースピードを合わせてみましょう。


次に今度は手前から奥までピントを合わせたいという事でF値を「F16」に設定したとしましょう。

F16というのはカーテンで言えば光の量がかなり少ないのでシャッタースピードを遅くする必要があります。

でもあまり遅くしすぎるとブレが生じるので、1/125が限界です。

これだと測光インジケーターは晴れの屋外でも-3くらいになってしまいます。
となるとISO感度を上げるしかありません。

測光インジケーターのカーソルが真ん中にくるまでISO感度を上げます。
この場合だとおそらくISO800前後くらいになると思います。

同じくミラーレスをお使いの場合は画面を覗きながらあなた好みの明るさになるまでISO感度を上げましょう。

天候や使っているレンズ、被写体までの距離等によって条件は変わってきますがイメージ的にはこんな感じで設定していきます。


セミオートという手もある

これまではマニュアルで撮るという事で説明をしてきましたが、カメラにはマニュアルとオートの間に位置するモードもあります。

「絞り優先」「シャッター優先」と呼ばれるもので、絞り(F値)だけ、もしくはシャッタースピードだけ自分で決めて、後はカメラにちょうど良い感じの明るさになるように設定してもらうというもので、いわばセミオート的な存在です。

今後、F値やシャッタースピードの違いで写真がどれだけ変わってくるかというのが経験を通して解ってくると思うので、それらを自分の表現したいようにコントロールできるようになったら、実はこっちの方が良いという事もあると思います。

というよりも、マニュアルよりこっちを使っている人の方が多いと思います。
マニュアルはあくまで露出を理解する為の手段とするのも全然OKです。


まとめ

それでは最後に総まとめを行いましょう。

まとめ
・露出とは真っ暗な部屋でメガネを掛けて、カーテンを何秒間開けていられるか?というイメージである。
・「メガネ」「カーテン」「何秒間」の3つが要素で、それは「ISO感度」「F値」「シャッタースピード」の事である。
・マニュアルで撮るという事はこの「ISO感度」「F値」「シャッタースピード」を自分で組み合わせて写真を撮る事で、逆にオートはそれをカメラが自動的にやってくれるという機能である。
・F値はピントの合う範囲をコントロールする役割も持っている。
・シャッタースピードは動きを出したり止めたりする事ができ、最低限手ブレしないシャッタースピードは確保する必要がある。
・実は「絞り(F値)優先」「シャッター優先」というセミオート的なモードもあり、こっちを使っている人の方が多い。


最後にこんな事を言っては身も蓋もないですが、それぞれの数値に関しては撮っているうちに自然に覚えるものですし、ピントの合う範囲の話とかもそんなに難しい話ではなく、「習うより慣れろ」的な所があるのでそれほど心配する必要はありません。

一番最初の「カーテンを何秒間」のイメージだけ掴めば、後は街に出て失敗してもいいからマニュアルで撮ってみる事が大事だと思います。
何枚も撮っているうちに「ああ、そういう事か」と解ってくると思います。

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